フランス語の発音の中に鼻母音(びぼいん)というのがある。
日本語でこれに似た発音を探すと、大阪弁に近い音があるように思う。
たとえば、「そうや、おまへんか?」の「へん」のあたりが。あるいは、
風邪を引いた時の鼻声なんかも。
鼻母音は文字通り、母音を発する時に口から音を出す際に、同時に
鼻からも若干、息が抜ける。聞いてもらえば、すぐに違いが分かる。
Bon は英語のgood に相当する。カタカナで表すと「ボン」としか書けない。
しかし、私の感覚では、「ボー」と言いながら、同時に鼻から息を漏らすと
フランス語の Bon の発音になる。
カタカナの「ボン」だと一端言い切ってしまって、すぐに音が途切れるが
Bon の場合は、いつまでも息が続く限り、音が続けられる。あたかも
船の汽笛のごとく。ま、そんな感じがします。
だから、Bonjour は「ボンジュール」ではなく、「ボージュール」と言いつつ
「ボー」がちょっと鼻に抜ける感じで発音すれば良い。日本語の「ン」は
絶対に出てこない。逆に「ン」を付けないのが正しい鼻母音だと思う。
Bien も「ビャン」ではなく、「ビエ」と言いながら、鼻から息を出す感じ。
maison も「メゾン」ではない。「メゾ」と言いつつ鼻から息を漏らす。
一度この感覚が掴(つか)めれば、あなたの鼻母音は立派なフランス語となる。
私は決して関西人ではないが、こないな説明で「どないや?」。
このコツさえ掴めれば、enfant も jardin も parisien の発音も簡単。
今度は、fille の発音。「フィーユ」ではない。思いっ切り、口の両端を横に
引っ張って「フィー」と言うところまでは良い。次の瞬間、その緊張を
一気に緩める。たとえば、輪ゴムを両手で引っ張っていたのを、パッと
離す感じ。
日本語の「ユ」とは全然違う曖昧(あいまい)母音になるのが正解。
よって、travaille は「トラヴァーユ」ではない。「トラヴァーイ」みたいに
言ってて、「イ」の寸前に一気に口の緊張を解く感じかな。
曖昧母音というのがフランス語の肝(キモ)だと思う。その代表が un 。
男性名詞の前に付ける不定冠詞だが、間違っても日本語の「アン」ではない。
力を抜いて締まりのない口元をして「アー」とも「ンー」とも付かず鼻から
息を出す。
un bon chien 愛犬に向かって「いい子、いい子」と呼ぶ時に、こう言う。
(この例は鼻母音の3連チャン。ゆっくりと発音してね)
この時の発音をカタカナで表すと「アン・ボン・シエン」としか書けないが
自分で意識的に鼻から息を抜く感じで発音してほしい。慣れれば簡単だ。
関西人なら、その日のうちに出来るだろう。だって日常会話でいつも鼻から
無意識に息を抜きながら話しているんだからねっ。
0 件のコメント:
コメントを投稿