2018年10月8日月曜日

万年筆で書写 その1

万年筆を集めるだけでは何の役にも立たない。
やはり筆記用具は書いてなんぼ。

そこでお気に入りのプラチナ万年筆で何か書くことにした。
エッセイは書いたこともないし、手紙を書く相手も居ない。

書くための題材を何にすれば良いのか。
般若心経は難しい漢字ばかりで面倒だなぁ。
高校時代から大好きな筒井康隆の文章なら興味もある。

原稿用紙2枚程度のショートショートなら分量も丁度良い。
最新版「発明後のパターン」(『天狗の落し文』新潮文庫 2004年)を選んだ。

映画俳優の名前を織り込んだ、特に意味のない超短編。
名前の略し方、名詞・動詞への使い方が絶妙だ。

ちなみに、同じ趣向のショートショートが昔にもあった。出て来る
映画俳優の名前が1930~50年代あたりなので、現在60代以上の人しか
知らないだろう。
 筒井康隆「発明後のパターン」(『バブリング創世記』徳間書店 1978年)

 ハリソン・フォード/ロバート・デ・ニーロ/アーノルド・シュワルツェネッガー
マーロン・ブランド/シルベスター・スタローン/ジーン・ハックマン
 ブルース・ウィリス/ケビン・コスナー/メリル・ストリープ
トム・クルーズ
 ジョディ・フォスター/アル・パチーノ
トム・ハンクス/ウディ・アレン/シガニー・ウィーバー

一発勝負で決めようと思って始めたが、一行目から脱字!
2本のペン(2色)を取っ替え引っ替え。忙しい。
これでも間違えた原稿用紙を2枚ほど捨てた。所要時間は2時間くらい。
写すだけなのに難しいね。集中力が長続きしない。

使用したペンとインクは次のとおり。<F>は細字。

本文:
プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 河口(かわぐち)<F>
 同 MIXABLE INK オーロラ・ブルー

俳優名:
プラチナ万年筆 #3776 センチュリー ニースロゼ <F>
 パイロット 色彩雫(いろしずく)躑躅(つつじ)

下の名称は、上では左から右へと並んでいます。


最後に、このショートショートの全文を引用してみる。
新潮文庫版『天狗の落し文』の帯に次のようにある。
 「盗用御自由!」文学史上初の使用権フリー短編集!

同書P.134-136より

  最新版「発明後のパターン」

 ハリソフォド博士はおどりあがった。
「おお。万歳。なが年研究の甲斐(かい)あってついにパトデニロを
シュワツネがったぞ。ああ。これで世界中のマロブラドをトムハンク
することができる。やっぱりわしは大天才だ」
 その時、シルベスタロンが研究室へ入ってきた。彼はジーハクマンを
見せびらかしながら博士に言った。「そうか。そうか。ついにバトデニロを
シュワツネがったな。この時を待っていたのだ。さあ。すぐにその
シュワツネがったバトデニロをおとなしくこちらへブルスウィリするのだ。
さもなければこのジーハクマンをケビンコスぞ」
「やめてくれ」博士は絶叫した。「ケビンコスな。それだけはやめてくれ」
「ではブルスウィリするか」
「ブルスウィリさぬことはない」と、博士は言った。「しかしシルベスタロン
お前はこのシュワツネがったパトデニロがどれほどメルストリプるものか
知っているのか。もしこれがメルストリプったらトムクルうのだぞ。
どうするつもりだ」
「メルストリプるってトムクルったらジョデフォスタすればいいのさ」
シルベスタロンは冷笑した。「さあ。早くブルスウィリしろ。さもなければ
ケビンコスぞ。ケビンコスとアルパチイぞ。それでもいいのか」
「いやだ。アルパチイのは困る。しかたがない。ブルスウィリすることに
しよう」
 ハリソフォド博士はしぶしぶシュワツネがったバトデニロをシルベスタロンに
ブルスウィリした。
 シュワツネがったバトデニロを首尾よくブルスウィリして大喜びの
シルベスタロンが研究室を出て行くと、ハリソフォド博士はくすくす
笑いながらつぶやいた。馬鹿(ばか)なやつ。あのシュワツネがった
バトデニロは、ただ単にメリストリプるだけではない。トムクルうた
反応で世界中のマロブラドはちっとトムハンクすることなく、それ
どころかいくらでもマロブラドるのだ。そうなるとあのシルベスタロンは
ウディアれるのだ。ウディアれり、ウディアレれり、そしてついには
シガニウィバって……」

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